院長コラム

佐賀新聞「診察室から」に掲載したコラムです。皆様の、普段の健康の何かのお役に立てばと思い公開します。
(文責:院長 佐藤智丈(さとうともたけ)


Column Index


ケガしたところは冷やすの?温めるの?

患者さんに「ケガしたところは冷やした方が良いのか温めた方が良いのか?」と時々質問を受けます。 打ち身、捻挫、肉離れなどの部位は、急性期は冷やし、慢性期は温めるというのが一般的です。 急性期は
(1)むりに痛むことをせずになるべく安静にする(Rest)
(2)氷で冷やす(Ice)
(3)弾力包帯などを用いて圧迫する(Compression)
(4)腕のケガならなら三角巾、足のケガなら足台などを用いてケガの部位をなるべく高く上げる(Elevation)
のが原則です。
この4原則の頭文字をとってRICE療法とよばれています。 少し楽になったら温めたり、マッサージしたりするのも良いでしょう。 スポーツでケガをした際に、痛いのに我慢して練習することは「根性がある」といって以前は美徳とされる向きもありましたが、今では時代遅れの考えです。
ケガを早く治すためには痛いときには無理をしないことです。 なるべく多く練習して、出来るだけよい記録を目指したいところですが、ケガをしたときには練習無理をしないようにして早く治して、本番で実力を充分発揮されることを期待します。

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インフルエンザについて

寒くなるとインフルエンザが流行ります。みなさん予防接種は受けられたでしょうか。 インフルエンザをこじらせると肺炎になることもあります。 肺炎は今でも日本人の死因の4番目にランクされ、重症化するとなかなか治りにくいばかりではなく治療費も高くなり、早めに予防しておくことが大切です。
インフルエンザワクチンの効果は、インフルエンザの流行期に発病を約3分の1に抑えることが出来、もしかかっても軽くてすむという結果が出ています。 ワクチンの効果は注射後2週間目ごろから効いてきて約5ヶ月間効果が続くといわれています。
ワクチンの副作用を抑えるためにも、必ず予防接種は体調の良いときに受けてください。最近は肺炎球菌の予防接種もあり、これとインフルエンザの両方の予防接種をしたほうがいい場合もありますますので、かかりつけの先生に相談してください。
さて、ここ数年でインフルエンザの治療方法も随分変わりましたので紹介します。 第一に迅速診断法の登場したことです。
これは鼻や喉の奥を綿棒でこすって特殊な試薬に入れることで、インフルエンザなら約15分で分かるようになりました。
患者さんには検査するとき少しつらい思いをしてもらうので気の毒なのですが、医師もこの検査で随分治療上の手助けになります。
第二に抗インフルエンザ薬(特効薬)が使えるようになったことがあげられます。 寒気、発熱、喉の痛み、咳、鼻水、関節痛など「インフルエンザかな?」と思ったら、早めに医療施設を受診してください。
迅速検査法で陽性なら、早めに抗インフルエンザ薬を使用することでインフルエンザも随分治りやすくなりました。治療が遅れると治りにくいばかりでなく、他の人にうつす危険性も高まります。
もしインフルエンザだったら、薬をきちんと服用して禁酒・禁煙し、そして水分を充分補給しましよう。充分な睡眠が必要なことは言うまでもありません。
風邪をかからないようにするためには、日頃から帰宅したらうがい手洗いを励行し、体力をつけ、体調の悪いときは無理をしないようにすることはいうまでもありません。
私たち医師や看護師が、多くの風邪の患者さんに接していているのにかかわらず元気で働けているのも、一つにはインフルエンザワクチンのおかげかも知れません。

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運動療法について

ダイエットの本を読んでいると、たまに「運動しても、その後で飲み食いするので運動はあまりダイエットに役に立たない」と述べてあることがあります。この説は一部分本当ですが、大方は誤りです。
運動後に減少した体重はほとんど汗などの水分で、その後に給水すると大体運動前の体重に戻ります。 しかし、かといって運動がダイエットの役に立たないかというとそれは間違いです。 運動により日常の基礎代謝が高まり、体力がつきます。 このことは日常生活でも例えば階段の上り下りが楽になったり、動作がスムーズに出来るようになったりすることで自覚できます。
高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防のためにも、運動を薦められています。 運動の程度は1分間に脈拍が110程度の運動(これは早足の散歩くらいの運動に相当します)を、一日30分位するのが適当だとされています。
現代はストレス社会とされ、頭を使いすぎて疲れてしまうことが多くなりがちですが、頭も体もバランスよく使うのが健康の秘訣と思います。

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胃アニサキス症について

イカとかサバの刺身を食べた後、数時間して吐き気や胃が痛くなる人がたまにいらっしゃいます。 その原因の一つとして胃アニサキス症があげられます。 アニサキスは魚の中にいる長さ2cmぐらいの寄生虫で、生で魚を食べた時に魚の中に入っていたこの虫が胃壁に食い込むようにもぐりこむことで症状が起こります。
アニサキスは小さい寄生虫なので食べるときに肉眼で見つけるのは難しく、従って「魚が当たった」といっても魚屋さんや調理人に罪はありませんし、 体質も関係しており同じものを食べても「当たる」人と「当たらない」人がいます。
アニサキスは人の体の中では数日間しか生きられないのでいずれは良くなるのですが、それまで我慢するのも大変なので 胃痛の時には内視鏡で虫を摘出するのが最良の方法とされています。
虫も1匹とは限らず、私も一人の患者さんで最高7匹の虫を摘出したことがあります。 この虫は強冷凍や充分に加熱すれば死ぬので、魚を焼いたり炊いたりすれば大丈夫ですが、刺身を食べないようにといってもなかなか難しそうです。 酢でも虫は死にませんし、冬に多い病気です。
生魚を食べて胃が痛くなったら医療施設を受診した方が良さそうです。

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AEDって知っていますか。

最近は公共施設を初めとして、あちこちにAED(自動体外式除細動器)設置場所を設けているのを目にするようになりました。
AEDは心室細動などの致命的な不整脈を、正常な脈に回復させるのに最も有効な装置で、今では一般市民も救命処置として使えるようになりました。
どのようなときにAEDを使うかというと、例えば人が突然意識をなくして倒れたとき、呼びかけてもまったく反応がないという場面に遭遇するとします。そのような時は先ず、誰か助けを呼んで、救急隊へ通報します。
次に、呼吸をしているか調べて、呼吸がないようなら口移しの人工呼吸をします。それでも全く体動など反応がないなら、胸を押さえる心臓マッサージと口移しの人工呼吸を30:2の割合で行なうことになります。
そこで、AEDがあればこれを装着し、AEDの指示により必要があれば心臓に電気ショックを与え心臓の動きを回復させようと試みます。 AEDはスイッチを入れると装置自身が音声で使い方を教えてくれます。
日常でめったにこの様な場面には遭わないと思いますが、日頃から使えるような心の準備も必要です。現実的に今日も世界中のどこかでAEDが使用され、以前は助からなかった命が助かるようになってきています。

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アルコール性障害について

お酒は「百薬の長」とも言われ、適度ならストレス解消や血流を良くしたりする効果もありますが、日常診療ではお酒の飲みすぎで体をこわす方を良く目にします。
その多くは肝障害ですが、膵臓や胃・食道の病気、高血圧の原因にもなり、喘息発作を誘発したり不眠症になったりもします。更にひどくなるとアルコール依存症を起こします。
お酒の成分のエタノールで男性は30g日以下、女性は20g日以下が適量とされています。エタノール濃度はビールが約5%、日本酒が約15%、ワインが約13%、ウイスキーが約40%、焼酎が25~45%ですから、 日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ウイスキーならダブル1杯が適量となります。
日本酒なら3合以上を5年以上飲むと肝障害を起こす危険性が高まります。お酒を飲んだら顔の赤くなる人や、女性にはより影響が出やすいようです。
お酒で体を壊したときは禁酒するに越したことは無いのかも知れませんが、付き合いとかもあり難しいときもあります。しかし、控えようとする気持ちが大切です。週に2日間はアルコールを飲まない休肝日を設け、適量を守りましょう。
最近飲みすぎている筆者自身に自戒の意も含め、今回の報告とさせていただきました。

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子供と喫煙

タバコの害によって、日本人を年間11万人、世界中では400万人の人間が死亡しています。
大人の喫煙率は減少していますが、若い女性の喫煙率が上昇しているのは問題です。 未成年からの喫煙は健康面でより危険で、非喫煙者と比較し肺がんに約6倍かかりやすくなり、高校生から喫煙すると約10年寿命が短くなります。
更に、未成年の喫煙は成長障害、知能、美容にも悪影響を及ぼすばかりではなく、大人はもちろん同世代の異性から見ても、 「格好悪い」「見苦しい」と思われているという調査結果があります。
一日3~4本のタバコを2週間続けると4分の1の人がタバコを止められなくなります。止めたくても止められない状態は「ニコチン依存症」という病気と認識する必要があります。喫煙者の8割が本当はタバコを止めたいと思っています。
学校の先生も子供の喫煙は「謹慎」などで処罰するより、「ニコチン依存症」を治療するという姿勢が必要ですし、今後学校での喫煙教育も必要であると思います。
教育の現場たる学校こそ、全面的に禁煙にすべきではないでしょうか。

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うつ病について

ストレス社会を反映して、最近では一年間に3万人以上の人が自殺で亡くなっており、自殺の大きな原因であるうつ病の対策は、現代における重要な問題の一つです。 うつ状態になると集中力が落ち、何もしたくなくなります。
この様なとき、周りの人が見たら怠けたようにも見え、「もう少し頑張ったら」といいたくなりますが、うつ状態の時には励ますのは良くないといわれています。 その理由は、うつ状態はストレスを克服しようと頑張って、脳がこれ以上頑張り切れなくなって疲れ果てた結果、無気力になっているからです。
「これ以上頑張ったら危ない」と脳が体に休むように命令した結果の生体反応といっていいのかもしれません。周囲の人も、励ますより温かい目で見守ってあげることが必要です。 うつ病は「心の風邪ひき」「脳の疲労」といわれます。風邪も疲労も休むことで必ず良くなります。
スランプは誰にもあります。
疲れた時にはあんまり頑張りすぎないで、あせらずに、眠れないときには安定剤を服用しても大丈夫ですから、休養を充分に取ってください。不眠症で悩んでいられるのなら、かかりつけの先生に相談してみるのもよいと思います。

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臓器移植について

臓器移植は特別なことと思いがちですが、現在日本でも腎臓、肝臓などの臓器移植が年間1000例以上行われています。心臓、肝臓、腎臓などの病気が重症化し、臓器を入れ替えることだけが唯一の治療法のことがあり、このようなときに臓器移植が行われます。
臓器移植のためには、他の誰からか臓器を提供してもらう必要があります。移植には親子や夫婦から臓器の一部を提供してもらう「生体からの移植」と、「脳死や死体からの移植」があります。
自分の大切な人が、移植が必要となったときに、提供したくても血液型や体格が合わず移植できないこともあります。臓器を提供してくれる人(ドナー)が見つからず外国で移植を受ける人もいます。日本の臓器移植の多くは生体からの移植で、脳死からの移植は年間ごくわずかです。
脳死を人の死と考えるのには賛否両論ありますが、もし自分が脳死状態になったとき、臓器を他の人に提供したいと思う人は「ドナーカード」でその旨を意思表示することが出来ます。
「ドナーカード」は病院や保健所などにありますので希望される方はご相談下さい。

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亜鉛欠乏症について

患者さんから時々「味が分かりにくい」「食べ物がおいしく感じられない」などの訴えをお聞きしますが、最近この味覚障害の原因として亜鉛欠乏症が指摘されています。
亜鉛は魚介類や、肉、卵をはじめとした食物の中に微量含まれており、亜鉛が不足することで色々な体の不調が現れてきます。 味覚障害、口内炎、食欲不振のほかに、皮膚炎や床ずれなどの皮膚の病気にかかり易くなったり、傷の直りが悪くなったりすることも亜鉛の欠乏が原因の一つといわれています。
亜鉛の塗り薬は皮膚病の治療薬として古くから用いられ、このことからも亜鉛と皮膚とは密接な関係があることが想像されます。 亜鉛の欠乏で発育・成長が遅れたりすることもあります。
更に、亜鉛は胃の粘膜を保護する働きがあり、胃潰瘍の薬として実際に用いられています。 食事をバランスよく食べれば、通常亜鉛欠乏症の心配は無いと思いますが、インスタント食品をはじめとした偏った食事には注意が必要です。
最近の環境破壊による土壌の変化により土地がやせ、そのために食物の亜鉛含有量が減少して、ひいては亜鉛欠乏症の原因の一翼を担っているのかも知れません。

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集団災害のトリアージについて

ニューヨークの世界貿易センタービルが倒壊し、2749人の犠牲者がでました。 尼崎のJRの列車事故で多くの犠牲者が出ました。 このような集団災害の際に、医師にとってトリアージが大切な仕事になります。
トリアージというのは災害現場で被災者を、重症、中傷、軽症、死亡に振り分けする作業のことで、重傷、中傷、軽症の順に優先して病院に搬送し治療しようとするものです。
一人ひとりの命に優先順位はありませんが、けがの緊急性や重症度に応じて治療の優先順位を決定し、救命可能な重傷者を優先的にいち早く病院に収容し治療を行うことで、よりたくさんの人命を救うことが出来るということが証明されています。
集団災害は無いにこしたことはありませんが、佐賀県医師会も佐賀空港の事故を想定してトリアージ訓練を行っています。
日常生活でもいくつかの仕事を並行してこなしていかなければならないことがありますが、うまくトリアージしてより大切な仕事を優先的に片付けていくのが仕事の達人といえるのかもしれません。

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量るだけダイエット

現代は飽食の時代といわれ、肥満が健康上の大きな問題となっています。
生活習慣病といわれる高血圧、糖尿病、高脂血症も肥満と大きく関係している疾患です。肥満解消法として食事療法と運動療法がありますが、言うのは簡単でもなかなか難しいようです。
外来で肥満の患者さんに体重をたずねても、量るのが怖いのか自分の体重を知ろうとさえしない傾向があるようにも思えます。
そこで、「量るだけダイエット」というのがあります。 これは、毎日2~4回体重を量るだけでダイエットするというものです。 一日の中で体重の変動もあり、日によって体重が増えているときもありますが、続けていくとよく効果が見られます。
要は、自分の体重に関心を持つことによって、体重が増えたら自分で食事を減らしたりして自己調節機能が働くのだと思います。
少しずつでも効果が見られたら量るのが楽しくなります。 みなさんも始めてみませんか。僕は、これで5年間に7kgやせました。

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血圧の薬は癖になる?

生活習慣の欧米化などの理由により、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満の人が増加し問題になっています。これらの病気に対して、食事や運動などの生活習慣を改善するだけでは、充分に目標の所まで管理できないときに医師は薬を処方することになります。
しかし患者さんは「血圧の薬をのんだら、癖になって一生のまなければならないので、のみたくない」とおっしゃる方が時々いらっしゃいます。 本当なのでしょうか。
まず「癖になる」という問題ですが、血圧の薬を飲んで薬で体質が変わって、薬が必要な体になるわけではありません。血圧の薬は、薬の効果が続いているあいだ血圧が下がるだけで、薬を止めたらまた元の高血圧に戻ってしまいます。 高脂血症や糖尿病の薬も同じことです。最近では、むしろこれらの薬を長期間服用することで動脈硬化予防や、腎臓の保護作用などがあることが分かってきました。
次に「死ぬまでのまなければならない」という問題ですが、そうとは限らず減塩や減量、禁煙など生活習慣を見直すことで、体調が良くなり薬が必要なくなる可能性もあります。
生活習慣病の薬は、元来長期間服用することを前提に開発された薬です。副作用にあまりにも神経質にならずに、かかりつけの先生と相談してきちんと服用してください。

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思春期の腹痛

僕は高校生の頃には神経質で、よく腹痛や下痢を繰り返し「きっと悪い病気にかかっていて長生きできないだろう」などと一人思い込んでいました。
最近の中・高校生たちもストレスが多いのか、習慣的に下痢・便秘を繰り返す方が多いようですし、皆さんも緊張した時などおなかを壊した経験はあるかとおもいます。 こういう症状の多くは過敏性腸症候群によるものです。
過敏性腸症候群は精神的なストレスによって、腸の運動機能のバランスが調子を崩したために下痢や便秘を起こす病気で、思春期や更年期に多いのですが、小児から老人まで幅広く起こりえます。
この病気は命にかかわることは無く、自然と良くなっていくことが普通ですが、他に重要な疾患があるかもしれませんので油断できません。過敏性腸症候群であることを確認するために胃腸の検査が必要なこともありますので、かかりつけの先生に一度ご相談ください。
ストレスを無くすというのは無理な話で、何も悩みの無い人はいないとは思いますが、あまり頑張りすぎず、暴飲暴食を避け規則正しい生活をするのがこの病気に対する付き合い方です。

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麻疹(はしか)について

麻疹も風疹(3日ばしか)も昔は殆どの人がこれらの病気にかかっていましたが、現在ワクチン接種で抵抗力をつけることでかかる人が随分少なくなりました。
しかし、数年前麻疹の流行がでて世間を驚かせました。麻疹は高熱が続き重症な病気です。
一方、風疹の症状はあまり強くないのですが、妊娠中に風疹にかかるとおなかの赤ちゃんに悪い影響を及ぼすことで有名です。両方とも発病したら特効薬はありません。
数年前の麻疹の流行の原因は、従来の1回のワクチン接種では年月がたつにつれ効果が薄れたことや、約20年前の一時期ワクチン接種を受ける子供が減少したため、今頃になって流行ったのだろうといわれています。
ワクチンの効果をより強めるために、最近では麻疹・風疹混合ワクチンを小学校に入学する前までに2回行うようになりました。
麻疹も風疹も、病気に対して対抗力があるかどうかは血液の検査で調べることで分かります。 今、麻疹が流行っているからといってすぐにワクチンを接種する必要はありませんが、もし必要なら調子の良いときにワクチン接種を考えてみるのもいいと思います。

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痛風について

足の親指の付け根が腫れて痛くなった方を時々診ます。 この原因として痛風があります。
痛風は美食家に多いことから昔「ぜいたく病」といわれていましたが、現在では飽食の時代を反映し、ありふれた病気となっています。痛風は体の尿酸の濃度が高まって起こり、特にアルコールや肉類を多く飲み食いすると高まります。社会的に活躍している人に多い病気でもあります。つまり大食い、酒飲み、活動的というような人がかかりやすいともいえます。
痛みは治療すれば1~2週で治りますが、こじらすと足首や膝や手首まで痛んだり、腎臓を痛めたりするので注意が必要です。高血圧や糖尿病の誘引となることからも早期治療が大切です。痛い時は痛み止めの薬服用し、患部を冷やし安静にします。全てのアルコールは痛みが治るまでは厳禁です。
一刻も早く薬で尿酸を下げたくなりますが、痛いときに尿酸を下げると逆効果です。痛みが治ってから尿酸を下げる治療をするとよいでしよう。粗食や禁酒も長続きは大変ですので、ほどほどで結構です。
普段から腹八分目で運動不足にならないようにし、十分な水分補給とストレスを減らす生活に心がけてください。

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胆石症について

胆石症の発見の歴史は古く、エジプトのミイラにも胆石が見られたといわれています。 日本の歴史でも徳川家康は天ぷらを食べて腹痛で苦しみ、これが元で死亡しました。 この症状も胆石発作が強く疑われます。
胆石症の治療は、胆石を溶かす薬や、体外から衝撃波を与え胆石を壊す方法、開腹手術などありますが、現在では「腹腔鏡下胆嚢摘出術」という小さな傷で胆嚢を摘出する手術が標準的治療になりました。
この手術が紹介されたのは15年位前で、私を含め多くの外科医は「手術は大きな傷で良好な視野の下で安全第一にするもの」と考えるものが多く、当初はこの腹腔鏡下の手術を冷ややかな目で見ていました。
しかし、患者さんの手術後の回復が早く美容的にも優れており、徐々に腹腔鏡下の手術が標準的な治療として確立されるに至りました。
20年位前は「高齢者になって胆石の手術をするのは危険なので、症状が無くても若いうちに手術した方が良い」という考えもありましたが、現在では「症状の無い胆石は様子観察」との考えが主流です。
しかし、胆石も他の病変を合併することもありますので、無症状でもエコー検査など定期的に診察してもらうことが必要です。

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熱中症について

温暖化の影響か、今年の夏も暑くなりそうです。炎天下の運動や作業には熱中症対策が必要です。高校生のクラブ活動、特に新入部員や肥満の人は要注意です。
熱中症の予防にはこまめに給水することがとても大切です。成人の体の60%は水分で構成され、体重の3%の水分が体内から失われると運動や体温調節能力が低下します。 失われた水分量は体重変化で知ることができます。
暑いときの運動や作業中は汗となって水分と同時に塩分も失われるため、塩分と糖分を適度に含んだスポーツ飲料などで給水するのが良いでしょう。 運動時の水分補給の目安は、運動前に約500ml、運動中には1時間当たり500ml以上の給水は必要です。何よりも体調の悪い時は無理をしないことです。
熱中症は、めまい・倦怠感・手足のけいれんなどの症状を引き起こしますが、熱中症の中でも特に言葉や応答が鈍いなどの意識障害がある「熱射病」の場合は危険です。 熱射病が疑われたときには、全身に水をかけて直ちに救急車を呼んだ方が良さそうです。
運動中は充分に水分補給をし、熱射病をはじめ、事故が無いようにしたいものです。

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糖尿病の食事療法について

記録上日本の最古の糖尿病の人物は藤原道長といわれています。
飽食の時代の現在、糖尿病患者は徐々に増加し糖尿病予備軍まで入れると1500万人になろうとしています。糖尿病の多くは無症状ですが、徐々に心臓や血管を傷害し、悪くすると失明したり手足がしびれたり透析が必要になったりすることが怖いところです。そのため「静かなる殺人者」と呼ばれています。
糖尿病の予防・治療のためには肥満解消が必要です。「水を飲んでも太る」という方がいらっしゃいますがそれは誤りです。肥満は消費カロリーより摂取カロリーが多いのが原因で、「納豆ダイエット」「バナナダイエット」などが話題になりましたが、特定ものを食べても体重が減るものではありません。
お菓子、ジュース、スポーツドリンクは思ったよりカロリーが高く、「ご飯は少ししか食べない」という方でも間食でカロリー過剰になる場合が多く、むしろ間食を止めてご飯をもう少し食べた方が良さそうです。
食事療法は「食品交換表・日本糖尿病学会編」という本が安価で参考になります。 食事は残りものを食べないようにして、体重測定を毎日行うことも大切です。

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夏の下痢について

わが県は、上質な肉と新鮮な魚介類が、比較的安く手に入る非常に恵まれた所ですが、この時期は食べ物も傷みやすく、また食べ過ぎでおなかをこわすことが少なくありません。
下痢したときに、たまに飲んだり食べたりせずに過ごす人がいますが、これは良くありません。むしろ水分補給は必要で、スポーツ飲料や、スープ、みそ汁など消化の良いものを出来るだけとりながら治していくことが大切です。
多くの下痢は、整腸剤などで自然と治っていくことが多いのですが、発熱や血便を伴うときは要注意で、カンピロバクター菌や病原性大腸菌などによる感染性胃腸炎の可能性があります。
このような場合は、下痢は病原菌を体外に出そうとする反応のひとつと考えられ、このため医師も下痢止めを処方しにくく悩ましいところです。抗菌剤での治療が必要な時もあり、かかりつけの医師に相談して下さい。
手洗いを励行し、衣類も別に洗濯したほうが良いでしょう。肝臓の悪い人は、夏場は刺身でビブリオ菌により足の炎症を起こすことがありますので、火を通した調理が望まれます。
下痢ぐらいと思われがちですが、生命の危険にさらされることもありますのでご注意ください。

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禁煙してみませんか

僕も7年前までは喫煙者でした。
病院に勤務していたときは、院内で禁煙が提案されたなら「タバコぐらいよかろもん」といって、最初に反対していたのは僕でした。
そんな僕も今では患者さんに禁煙を薦めています。それは、タバコを止めて本当に良かったということを、身をもって実感しているからです。
タバコの値段の60%以上は税金です。タバコ税などで日本では年間2兆8千億円の経済効果があるといわれています。
しかしながら、タバコが原因の病気による医療費などによる損失は5兆6千億円にも上ります。日本経済から見ても損失の方が大きいということが分かっています。
喫煙により肺がんで4.5倍、喉頭がんで32.5倍死亡率が高くなります。発癌性のみならずタバコは気管支炎や胃潰瘍や心筋梗塞などの大きな原因になっていますし、妊娠中の喫煙は未熟児の原因にもなります。
タバコは美容にも悪影響があり、タバコを吸う女性は吸わない女性に比べ、5歳以上も肌が老化します。男性ではインポの原因にもなります。
タバコの害によって、日本人を年間11万人、世界中では400万人の人間が死亡しています。「タバコを止めてまで長生きしたくない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、非喫煙者は平均8年間の闘病生活の後77歳で死亡するのに対し、喫煙者は13年間闘病し70歳で死亡するとされ、結局タバコで病院通いする期間が長くなるということになります。
軽いタバコに変えても、タバコの本数を減らしてもニコチンが体内に入る量は余り差がありません。止めるときは「スパッ」止めた方が楽に止められますし、ストレスも少なく済みます。
7月からタバコの値段も上がりました。禁煙するのにいい機会かもしれません。 自分の意思だけで止められないときはニコチンパッチなどの「ニコチン代替療法」もあります。
6月から医療保険で禁煙治療が出来るようになったので、かかりつけの先生に相談してみてください。

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胃食道逆流症について

皆さんは食べ過ぎたり、脂濃いものや刺激の強い食事を食べたりした後、「胸焼け」「胃痛」を感じることはありませんか。
この原因の一つとして胃食道逆流症があげられます。胃食道逆流症の症状は、「胸焼け」「胃痛」や食べたものが「つかえたり」「あがってきたり」などの消化器の症状のみならず、「喉のイガイガ感」「胸・背中の痛み」「頑固な咳」などもあります。最近では、胃食道逆流症は日本人の約30%に認められるともいわれています。
普通は胃液が食道に逆流しないようにする機能がありますが、この機能が弱まり胃液で食道の粘膜を傷害されると胃食道逆流症を起こします。
内視鏡検査を行うと、典型的には胃食道逆流症では下部食道にただれた部分が観察されるのですが、検査で異常がない胃食道逆流症の人も多いということも知られています。 前かがみの姿勢を続けたりコルセットなどでお腹を締め付けたり、また肥満、便秘なども症状を悪化させます。
胃食道逆流症には胃酸を抑える薬がよく効きますので、かかりつけの先生にご相談下さい。

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狂犬病について

最近のペットブームを反映して佐賀でも犬を飼う方が多く、外来でも犬に咬まれた方が時々来院されます。
患者さんも狂犬病のことを心配されますが、日本の動物にかまれて狂犬病になった方は過去40年間ありません。 このため私たちも狂犬病の心配は無い事を説明するのですが、今後発生する可能性が全く無いとはいえません。
狂犬病は犬だけではなく、ほとんど全ての哺乳類が感染し、感染した動物に咬まれてから2週間から1年経って発病し、重篤な状態になるとされています。しかも、狂犬病が発生していないのは日本を始めわずか10余りの国と地域だけで、全世界に蔓延しており油断できません。
日本で飼い犬に咬まれて発症することはほとんど無いと思いますが、今後、非合法的に輸入された動物から感染する事はあるかもしれませんし、海外旅行中に動物に咬まれて感染する事もあるかもしれません。狂犬病は決して過去の病気ではありません。 発病を防ぐためには海外旅行前や、疑わしい動物に咬まれてからの狂犬病のワクチン接種が重要になります。
愛するペットにも予防接種をきちんと受けさせることは言うまでもありません。

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家庭血圧について

血圧が一定していないことを心配される方がいらっしゃいますが、血圧は一定していないのが普通です。
通常血圧は日中高く、睡眠時は低くなります。医療施設で測定すると、緊張して血圧が上がることもよく経験され、白衣を着た人がいるところで上がることから「白衣高血圧」といいます。
横になって計るよりも、座って計った方が血圧は低くなりますし、入浴後は低くなります。一日一日血圧は変動しますし、長い目でみて本当に高血圧かどうか判断する必要があります。
このことから家庭血圧を測定することが大切です。家庭で血圧を朝食前と、出来れば寝る前の2回測定しましょう。 安静時に同じ姿勢で2回程度測定し、平均値を記録してみられたらいかがでしょうか。 家庭血圧が135/85mmHg以上は高血圧です。
血圧計は指や手首で測るタイプもありますが、腕で測るほうがお勧めです。毎日記録したデーターを参考に主治医の先生と相談してください。脳卒中、心臓病の予防の面から、高血圧をきちんと治療していくことはとても大切です。
血圧の薬は「くせ」にはなりませんから、医師とよく相談して安心して服用されてください。

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メタボリック症候群について

近年、糖尿病などの生活習慣病が問題視されていますが、まだ糖尿病というところまでいっていない予備軍、つまり糖尿病の前段階の方も大勢いらっしゃいます。
このような方も安心は出来ません。
高血圧、糖尿病、高脂血症にすでになっている方はもちろんですが、それぞれの予備軍の状態と肥満が複合すると心筋梗塞や脳卒中の危険が高まるということで、メタボリック症候群という考え方が生まれました。
すなわち、へその周りの腹囲で男性なら85cm、女性なら90cm以上の肥満体型で、高血圧、糖尿病、高脂血症の予備軍の状態が2つ以上複合するとメタボリック症候群としようというのが大まかなところです。
肥満を身長や年齢に関係なく腹囲で一様に決めてしまうのには問題があるとは思いますが、自己管理にはいい指標になります。肥満者は少しでもウエストを細くするのが健康につながりますので頑張りましょう。
急激なダイエットはリバウンドや体を壊しかねないので、1ヶ月に1kg程度のダイエットで十分です。
なるだけ体を動かして、大食い・早食い・欠食をしないように注意しましょう。健康に自身のある方でも定期的に血圧測定と血液検査をうけることが必要です。

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未病について

中国の古典では「名医は未病を治す」と述べています。
「未病」とは、症状が無くても検査で異常のある場合や、検査で異常が無くても症状がある場合と考えたらいいでしょう。
最近のメタボリック症候群に注目が集まったり、検診が推奨されたりしているのは、この「未病を治す」ことと同じ発想です。元をただせば同じ病気でも、一旦こじらせると治るまでにすごく大変です。
早期発見・早期治療によって病気も早く回復し、医療費も随分節約することが出来ます。調子が悪かったら、早めに受診してください。
日々、新しい薬は開発されてきますが、世の中にどんなに優れた薬があろうとも、薬を必要としない丈夫な体であるのに越したことはありません。食事、運動、禁煙、飲酒、休養が健康の5要素といわれていますが、ストレス発散も大切です。
医者も結構気を使う仕事で、僕はジョギングで発散しています。佐賀平野を走っていると、気持ちも新たになってアイデアも浮かびます。
いい季節ですのでみなさんも散歩でいいですから汗をかいてみませんか。 頭も体もバランス良く使うのが健康に良いと思います。

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日本の医療制度を考える

わが国では高齢化により更に医療費がかかるのが心配されるため、医療保険の改定が時々行われています。
しかしながら他の国と比べて見ますと、日本の医療費は国内総生産に占める割合で見ると7.5%で、世界の18位にあり決して高くないということが分かります。
一方、日本の医療の水準は、WHOの健康達成度と健康寿命評価でみると1位とされ、この点を考えると日本の医療は安い医療費で高い効果を達成しているといえます。
イギリスでは手術を受けるのに1年位待たされるといわれ、アメリカでは加入している保険の種類によって、受診できる医療施設は限定されます。わが国の保険証1枚で好きな医療施設にかかれるということは、私たちは当たり前のこととして思っていますが、これも世界に誇れる優れた制度ということが出来ます。
若い人に比べて年をとると病気がちになり、約4倍医療費がかかります。 近年の少子高齢化を考えるとき、医療制度も修正が必要なのかも知れませんが、税金の使い方を再考して、患者さんの自己負担を増やさずに現状の医療制度を維持していくことは可能です。

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気管支喘息について

喘息発作は、夜間などに呼吸が「ヒューヒュー」と息苦しくなる病気で、子供から大人まで幅広くみられます。
喘息の治療は、発作を止める治療と発作を予防する治療に大きく分けることができます。発作の頻度が少ないときは、息苦しくなった時にこの発作を止めるベーター刺激剤の吸入などの治療が中心になりますが、発作が再々起きる場合はあらかじめ発作が起こらないようにするステロイド剤の吸入などの治療が必要です。
吸入する薬剤の種類によって、発作止めか発作予防かという治療の目的が異なることに注意しなければなりません。
最近はこの発作を予防する治療が進歩し、上手に使うことによって副作用はほとんどなくなりました。喘息の体質は根本的にはなくならなくても、治療によって発作を起こらないようにして普通に日常生活を送ることは可能です。
喘息発作の苦しさは当人でないとなかなか分かり得ないのかも知れませんが、喘息の患者さんも普段は普通に生活しているせいか周りのものも軽く考えがちです。
それでも現在国内で喘息によって年間約3千人死亡しており油断できません。発作が起こったときには早めに対処することが必要です。

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服薬アドヒアランス

「服薬アドヒアランス」という言葉があります。 患者さんが薬を決められた用法用量できちんと飲んでいるかどうかを考えてみたとき、きちんと飲んでくれているとき「アドヒアランスが良い」という言い方をします。医師は患者さんがきちんと飲んでくださることを信じて薬を処方しています。
しかし、再受診してこられた患者さんに確認するとき、この服薬アドヒアランスが良くない場合によく遭遇します。
これは、その薬が患者さんの体質に合わなかった場合もありますが、患者さんが勝手に服用を調整したり、止めたりする場合もよくみられます。
例えば、高血圧の薬を血圧が下がったからといって、勝手に薬を中止する患者さんもいらっしゃいます。 以前にご主人の「胃の薬をもらって飲んでいる」と言われたご婦人に、何の薬か確認したところ抗癌剤だったこともありました。
薬のことで疑問に思ったら、医師や薬剤師の先生に遠慮なく問い合わせして見られたらいかがでしょうか。
医師も患者さんに早く良くなってもらいたいと祈るような気持ちで、どの薬がいいだろうかと頭を悩ませながら処方しているのですから。

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傷の治し方について

僕の子供のころは、ゲガをしたら「赤チンキ」という消毒液を塗って済ますことが多く、大体はこれでケガはいつのまにか治っていました。
その後、「赤チンキ」は理由があって姿を消し、代わりにヨード液が登場しました。現在でも外傷の患者さんにこの「ヨード液」は使用しているのですが、最近傷の治し方がまた見直されてきています。
まず消毒薬も大切なのですが、消毒は健康な細胞まで傷害するので過度な使用は控えるべきという見方がでてきました。
次に、汚い傷は従来特別な滅菌水で洗っていましたが、水道水で十分だという意見もあります。
最後に、傷は濡らさぬように心がけていましたが、場合によっては湿った状態の方が早く治るという研究結果もあります。
これらの考えは、従来行ってきたやり方と随分違うので抵抗がありますが、実際に効果があるのなら僕ら医師も傷の治し方について考えを改めることが必要なのかもしれません。
しかしながら、ケガといっても色々で、治療法も状況に応じて変わるので、かかりつけの先生に相談されたほうが良いと思います。

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